午前中は思考力を要する作業に全力を当てる
朝をどう過ごすかがタイムマネジメントの鍵を握っている
教え子たちにはいつも起床時刻や朝の様子を聞くようにしています。彼らの9割は朝、家を出る時刻ギリギリまで寝ていて、起床後大慌てで用意をして家を出ます。そして例外なく勉強で苦労しています。
1割の生徒は家を出る1時間以上前には起床しています。家を出るまでに余裕を持って準備をし、中には好きな飲み物を飲みながらラジオやテレビを見る時間まで作っているつわものまでいます。また作った時間を計算や暗記など勉強時間にあてている人もいます。彼らはみな当然のように勉強ができます。
このことは、一日のスタートを余裕を持って切ることができれば、成績を上げることができることをはっきり示しています。
ここでも「双曲割引」の特性を持つ人の行動パターンに触れざるをえません。今楽しければいい、というふうに今より後のことは大きくその価値を割り引いて考え行動するパターンの人のことです。多くの人がこの「双曲割引特性」を持っているお話を以前しました。
朝なかなか布団から出られない人は、まさにその典型例なのです。布団の中で安眠を優先させたい。布団から出て学校の用意をするなんて嫌で仕方ない。毎朝今すぐ起きるかどうか激しく葛藤しています。
朝余裕を持って行動しなければならない理由は、たくさんあります。起床後、朝食をしっかりとることができれば、栄養素の一つブドウ糖が速やかに脳に達するので、午前中の活動に大きな影響を及ぼします。また眠っていた内臓器官が目覚めるため、大腸がぜんどう運動を始めるなど体調管理に大いに好影響を与えます。
早起きは三文の得ということわざがあります。体調管理ができること一つをとっても早起きは素晴らしい習慣であることに間違いはありません。
午前中の脳の活動はキレキレ状態
寝ている間に脳は起きていた時間にインプットした多種雑多の情報を整理しています。それはあたかもコンピュータが定期的にその内部で雑然として非効率な状態を整理し、最適化している様子に似ています。脳も情報を扱う最重要器官ですから、そうしたことを眠っている間にしているのです。
すると翌朝目覚めた後の脳の状態は、非常に整理されすっきりしています。そのため外部からの情報をインプットしやすく、また集めた情報に加工を施してアウトプットしやすくなってもいるのです。脳にとって最高の状態が、午前中の数時間にわたって続いているのです。
その時間を半分眠っているような、力の抜けた状態で過ごすのは非常にもったいないことなのです。午前中は、なるべく思考力を要するような作業にあててください。例えば数学の文章題や、英語や国語の読解がいいです。新しく覚える英単語や漢字を覚えたりする作業も有効です。かつて習ったものを復習する時間は単純作業にあたりますから、午後に回しましょう。
学校や予備校に通う生徒は、あらかじめ決められた時間割を受けなければなりませんから、自分の思うようにできないかもしれませんが、午前中の授業を全力で集中して学んでください。
社会人であれば、仕事にも同じことが言えます。アイデアを練り、何もないところから何かを生み出し、形あるものに仕上げて行く作業などに適しています。それほど思考力を擁しない単純作業や流れ作業をするのはもったいないです。
午前中にそうした力仕事を終えておくと、その時点で充実感に満たされます。その後のスケジュールが少々予定通りにいかなくても、すでに十分仕事を終えているから、という安心感があります。
浪人生など時間を思い通りに使える環境にいる人には特にそうした午前中の使い方をお勧めしています。浪人生活は孤独との戦いでもあります。時には精神的に不安や恐怖に包まれることもあると思います。しかしこの方法であれば、そうした心理的な波をなるべく小さく抑えることができます。