展望を開く
「元気を出そうよ」
かわいい猫のイラストが描かれた小さなポストカードに、上の言葉が手書きで書いてある。
実家の廊下の隅に私が中学高校時代からずっとかけられている。
それを見るといつも変な違和感を感じる。元気があってもなくても、そんな言葉をかけられると、逆に元気がなくなる気がするのだ。
勉強や友達関係で悩んでいる子供たちは、多くが深刻な事態に陥っている場合が多い。彼らが最も必要としているのは間違いなく次のことである。
「自分の行く先に光を見出すこと」
この道を行けば、展望が開け、今抱えている悩みは消え去るんだ。そう確信してもらうこと。
私は人に勉強を教える仕事を20年近くしてきた。そのうち生徒の自宅に行って直接指導する「家庭教師」というスタイルが半分以上。実に様々なケースに当たってきた。
その数々の経験の中で学んだ一番大切な家庭教師としての使命が、それなのだ。
「具体的に、何をすればいいかを、生徒にはっきり示すこと」
それ以外に彼らを笑顔にする方法はない。「元気を出そうよ」といった漠然とした励ましの言葉は力がなく、場合によっては逆に気分を落ち込ませる結果になる。
つらい状況にいる人に言葉をかける時は、よく考えて、注意深くしなければならない。